キラキラの方へ。

しがないミソジのゆるふわ雑記

愛も希望もつくりはじめる:今、「加藤さん。」なスピッツ3曲

加藤シゲアキさん、30歳の誕生日おめでとうございます! 

「NEWSメンバー×スピッツ」で勝手なお祝いとさせていただきます。

 

個人的に、加藤さんには、とても”人間くさい”人だなぁという印象を抱いています。「我思うゆえに我あり」的な感覚の。…デカルトとか全くわかってませんので、ニュアンス。

 

ただし。その前に告白しますと、実は私、加藤さんの物書きの仕事に全く触れておらず(汗)アイドルとしては違うかもしれないけれど、作家としては自分個人以上に作品を好きになってほしいくらいだろうに…申し訳ない。それでなくても、何もかもチェックしているわけではないし、勉強熱心でもないのでおこがましいですが、あらかじめ「そういうヤツに見えている加藤さん像」なんだなという心づもりで読んでいただければ幸いです。他のメンバーについても同様のことが言えるのだけど、特に自分の作品として世に出しているものに触れないでいたら、かなり深度が浅いことになるので、前置きしておきます。私に見えている加藤さんも加藤さんの一面であるとは思うので書くには書くが…お詫び。

お祝いのにぎやかし程度になれば!

 

と、いうことで「我思うゆえに我あり」的とは何かという話を続けます。

加藤さんて、自分が傷ついたり失敗したり後悔したり、そういう一般的には”負”とされるような感情をとても大事にしようとしますよね。近いところではNEVERLANDツアーで声の調子が悪くなってしまった時も、自分を追い込み過ぎでは?と思うほど”反省”する姿を見せていました。J-webとか、確かラジオでも。(”反省”じゃなく”参考”と言うべき?)他の何かのためというよりも、「自分への戒め」*1 だと言いながら。こんな姿を見せることを求めていないファンもいるだろうこともわかった上で、あえて見せる。「恥さらしな文面を読んでくださり、ありがとうございました。」*2 とまで言って。おもしろい人だなぁと思います。

自分のことをさらけ出すためには、それを自覚して咀嚼する必要がある。とても客観的な姿勢を感じます。自分の感情に形を与えたり、名前をつけたり、別の角度から見てみたり、あえてもやっとしたまま置いておいたり。自覚できていることも自覚できていない状態も全てを自覚していたい、という感じが「我思うゆえに我あり」的印象につながるのだという気がします。まさに”人間”ゆえの。そして自分の感情が大きく動いた瞬間を逃したくないのではないかとも思います。生々しく強い感情がわくような体験って早々ない。そういう感情の動きはプラスにもマイナスにも簡単には分類できないような貴重な体験であるわけです。だからそれを見つめるのがたとえつらい作業でも、一方ではそこに挑みたいんだろうな、と。どうにもならない感情とそれを見つめる客観的姿勢とが入り乱れた鮮やかな状態で。この能力と関心が、作家としての加藤さんの力なのですね、きっと。(その作品を読んでないものだから、ふわっと。)

 

そういうわけで、今回曲を選ぶにあたって重視したのは、「人間くささ」と「客観的な態度」です。

 

1.今一番「加藤さん(美しい系)」な曲

『サンシャイン』(アルバム『空の飛び方』収録)

サンシャイン

サンシャイン

サンシャイン - スピッツ - 歌詞 : 歌ネット

個人的「スピッツの美しい曲ランキング」の上位にいつもいるような曲です。美しさにも色々あるけれど、この曲は硬質なイメージ。ごちゃまぜで勢いがある動的美しさというより、厳選した静的な美しさと言うか。曲調はやわらかいんですけどね。

 

困らせたのは 君のこと

なぜかまぶしく思えてさ

 

少しマイナス方面の感情から入るところが 、なんとなく合うかしら、とも。ものすごく大切な感情をちょっとひねって伝えるような。

 

すりガラスの窓を あけた時に

よみがえる埃の粒たちを 動かずに見ていたい

 

良いっすね。「よみがえる埃の粒たちを 動かずに見ていたい」って…。

私は埃が光に舞う様子を思い浮かべるのですが、そういう光景はとりとめのない日常の一コマ。ましてや「埃」は一般的には価値がなくむしろマイナスのイメージさえあります。しかし言われてみると、埃に光が反射してきらめく様子に心動かされた感覚を呼び起こされる。(たまに見とれる派なもので。)

加藤さんの、人には無価値だと言われたりしそうな感情にまでこだわるところと重なる気がします。

 

許された季節が終わる前に

散らばる思い出を はじめから残らず組み立てたい

 

こちらもこだわりを感じる一節。

「人間くささ」と「客観的な態度」がそろっており、夏の曲としてもばっちりということで選曲。

 

 

2.今一番「加藤さん(ユニーク系)」な曲

『ウィリー』(アルバム『フェイクファー』収録)

ウィリー

ウィリー

ウィリー - スピッツ - 歌詞 : 歌ネット

ちょっとシニカルでユニークな感覚も加藤さんの持ち味な気がしています。悪い意味ではなく。客観的に自分を見てしまうからこそ、ちょっとおちゃらけたり、興奮したり、子どもっぽいなんて言われそうなところを見せてくれる感じ。少しの自虐スパイスを入れながら。そんなところも加藤さんの要素としてイメージしてみました。たぶん加藤さん自身はどんどん率直な方向に向かっていると思うのですが。

 

サルが行くサルの中を

 

人間を「サル」と表すのは、いかにも”人間”。

選んだのはこの点につきます。(歌詞で見る限り冒頭しか出てきていないですが、かなりここのフレーズ繰り返します!試聴では切れてますけど!(泣))

草野さんの伸びのある声が気持ちいい。

 

だんだん止めたい気持ちわき上がっても手に入れるまで

もう二度とここには戻らない

ウィリー 孤独な放浪者いつかはウィリー届くはずさ

 

詞も曲調もユニークでありながら、真摯。スピッツはそういう曲の宝庫だと思います。

誰かに言っているような、自分に言っているような。

加藤さんの、時折自分を客観視しながら確実に歩んでいるところを思い浮かべながら。

 

 

3.今一番「加藤さん(脱皮系)」な曲

『春の歌』(シングル『春の歌/テクテク』、アルバム『スーベニア』収録)

www.youtube.com

春の歌 - スピッツ - 歌詞 : 歌ネット

加藤さんがこれまで積み重ねてきたものが、ご本人も言うように確実な自信になってきているそうですね。そういう心境にぴたっとする曲ではないかと思います。詞は全部ピックアップしたいくらい。

 

重い足でぬかるむ道を来た トゲのある藪をかき分けてきた

食べられそうな全てを食べた

 

ここは加藤さんがとにかく自分にできることを探し求めた頃のイメージがだぶりました。

 

長いトンネルをくぐり抜けた時 見慣れない色に包まれていった

実はまだ始まったとこだった

 

一つの扉を開けると、新しい景色と別の扉が現れる、そんな感じ。

今の加藤さんも一つの大きな扉を開けて、新たな扉に向かっているのかも。

 

「どうでもいい」とか そんな言葉で汚れた

心 今放て

 

平気な顔でかなり無理してたこと 叫びたいのに懸命に微笑んだこと

朝の光にさらされていく

 

忘れかけた 本当は忘れたくない

君の名をなぞる

 

これらの描写は自分の感情を一歩引いて見つめて、さらにそれを越える意志を感じさせます。

 

歩いていくよ サルのままで孤り

 

そう、実は『春の歌』にも「サル」が出てくるんです。『ウィリー』の頃よりは、確実に一段上がっている様子に、「ウィリー、ここまで来たんだね…」なんて感慨深くなってしまう。この「サル」は自分ですね。

 

春の歌 愛と希望より前に響く

 

春の歌 愛も希望もつくりはじめる

 

この力強さが今の加藤さんだなぁと感じます。どこかにある愛や希望じゃなくて、もっと良いも悪いもないような生命力あふれる何かを求めて。

 

 

かなり有名な部類の曲を持ってきてしまったことが、くやしい(笑)けど、今の加藤さんに合うなーと思ったので観念しました。増田さんとアルバムが2枚もかぶってしまったし。しかも「春」だしなー。…精神的な「春」ということで。

30歳の加藤さんには平和をテーマにした歌番組のMCや『グリーンマイル』といったヒューマンな舞台もひかえているのですね。今の加藤さんのイメージにすごく合っているなぁと思いました。(実は『グリーンマイル』もまだ観たことないんだけどね…←)

 

ということで、29歳の加藤さんは私の中ではこんなイメージになったよ、報告でした。

30歳が加藤さんにとって更なる飛躍の年になりますように

 

 

 

はい、通例の余計なプチ宣伝いきます! 

今年はスピッツの結成30周年(ドラムの崎山さんの加入30周年の噂も)。加藤さんと手越くんはスピッツとタメなわけですね!そう考えると本当に長い時間。

スピッツは目下全国ツアー中です。各プレイガイドにてチケットの抽選販売や一般販売の機会も残っているようなので、もしご興味あればぜひ。結成30周年ツアーですので、普段のアルバムツアーよりも比較的メジャーな曲がそろっており、スピッツ曲を網羅していなくても聴きなじみがある曲がきっといくつかは入っているかと!!…がんばってもなかなか取れないんだけどね(涙)

では。

 

*1:@J-web

*2:@J-web

俺が天使だったなら:今、「増田さん☆」なスピッツ3曲

増田さん、31歳サーティーワンの誕生日おめでとうございます!

小山さんの誕生日の時に勢いでやった、勝手に「メンバー×スピッツ」というひたすら自分が楽しいだけの企画にてお祝いとさせていただきます。

なお、小山さんの時はちょっとテンションで突っ走り過ぎたきらいがあるので、少し落ち着いて書きたいと思います。*1 行きまーーーす!(全然落ち着いてない。)

 

実は増田さんはNEWSメンバーの中で一番スピッツの曲が幅広く似合う人なんじゃないかと常々思っていました。

理由の一つは、増田さんは言語化できない感覚のようなものを表現できるたたずまいの人だという印象があるから。個人的には、加藤さん・小山さんは言うまでもなく、手越くんもかなり論理的な思考回路をもっているように思います。(小山さんもわりと感覚系かと思うけど、感覚系というより感情系かなぁ。勝手なイメージ也。)もちろんみんな感情は豊かだし、想像力うんぬんの話では全くないです。

それに対して、増田さんには直感を強く信じていそうなところがある気がします。言葉で説明がつかなくても。(注:”志”とか”夢”とかに対する情熱の話ではなく。)それは、ライブ演出やグッズ制作においての話に顕著かなと。増田さんに在る確信の言語化を加藤さんがフォローしたり、みんなでくみ取っていたりしているようですね。増田さんとしては「ロジます」の心意気だそうですが、そのあたりはがんばってもらうとして笑(そこが魅力的なところだけど、ある程度納得行くくらいに伝えられるようになれたら、増田さん自身もきっとストレスフリーだよね。ん~でも両立しない時には、引け目なくイメージを優先してほしい!!私は。)

それと、増田さんって宇宙的な壮大さを感じさせると思えば、きゃりーぱみゅぱみゅちゃん的(増田セバスチャン的と言うべき?)なキッチュな人工的世界にもなじめそうな、なんとも不思議な存在感があると思うのです。”増田貴久”という濃ゆ~い個人から、それが消え去ったような抽象的な存在にまで、1から無限大にまでもなれそうな。思考回路がいきなり増田さんじゃなくなって、別のものにスライドすることさえ有りうる気がしてしまう。考えようによっては”こわい”想像。テレビで増田さんを見ているときはそんなキケンな匂いはしないのだけど、ふと思い出す増田さんは私の中ではそういう印象をまとっています。加藤さん、小山さん、手越くんには、どんな状況でも”その人”であり”人間”であるだろう安心感があるんだけど。増田さんは動物や虫が苦手だし、こだわりが強かったり頑固だったり人に厳しかったりするところがあるって自分でも言ってたりするし、衣装や撮影等の”見え方”という現実への執着は人一倍あることを知りつつも、一見それに反するような印象を私が感じる理由は何なのだろう。ソロ曲の影響は強いと思うけど…。今度また考えます。(増田さんの掌の上で転がされているのかも?)

そして、スピッツ*2 草野さんの詞はイメージや雰囲気といったモノの、層の重なりやツギハギでできているような印象を受けます。1つひとつの言葉が限定されずに浮遊していて、だけど聴く人は自分なりのなんらかのイメージでつかみとって聴いてしまうような。かと言って、空虚な言葉が並んでいるわけではない。各々に寄り添った形にアレンジされながらも、最後にはどこかの風景に導かれます。かつ言葉がメロディーにしっくりはまっていて。メロディーを口ずさむだけで言葉がすっと入ってくるような曲だと感じています。*3 スピッツの曲は感覚的に聴かせてもらえる。あくまで不勉強な一ファンの見解ですが。

そんなスピッツの1から無限大まで、みたいなところが、増田さんと相性がよいのではないかと。

 

そして、理由がもう一つ。

音楽についてはもっぱら聴くだけで文字を読まないのですが、この頃スピッツのことを書くべく少しだけ読んでおります。そこでアルバム『醒めない』のインタビューに「男がかわいいものを表現したいっていうのが、ちょっと奇異な時代っていうのが、20世紀、続いてたんだけど」*4「ロック・バンドがかわいいものとか気持ち悪いものとかを混ぜて提示するほうがむしろラジカルなんじゃないかという考えもありましたし。」*5 という草野さんの言葉が出てきました。そういう時代を経て今はそれが普通になった、という話の流れで。

そこでひざを打ちました。私が増田さんに合うと感じていた理由は「これ(も)だ!」と。先ほども書きましたが、増田さんってかわいい系もいけるんですよね。もちろんメンバーみんなかわいいところがあるし、”かわいい”もできる。しかしかわいいの系統というのがあるとしたら、増田さんは変幻自在系かわいい。中性的にも、生物的にも、ファンタジー的にも、多様な”かわいい”になじんじゃう。ちょうど6/30(金)のMASTER HITSでもリンクする話をしていたのでメモ。航空会社で働くリスナーさんの、飛行機や空港が好きという趣味が男の子みたいと言われるという話に対して、増田さんも服好き加減がぶっ飛んでいて一般的には女の子よりの色味にも「かわいい!」と思うような感覚があることをあげ、「趣味が男の子っぽい女の子っぽいみたいなのって、ちょっとそれはね、人が思う、なんて言うんだろ、感覚の違いですからね。それを逆に超えた部分ていうのは、逆にちょっと誇らしい部分だと思いますけど。でも、素敵ですよ。素敵だしなんかかっこいいしね。」と。衣装においても充分に見せつけられてきましたが、性別の固定観念なんか越えた域を解し表現できる人なんだ、と。(THE MUSIC DAYで他のグループと並んだことでかえって鮮明に感じましたが、衣装めっちゃかわいかったです。手越くんのかわいさなんですか?似合いすぎでは?あ、脱線。)

そして、草野さんの言葉通りスピッツの曲はかわいい。今はそういうバンドも珍しくないのかもしれないけれど。変態かわいい。エロかわいい。こじらせかわいい。切なかわいい。キラキラかわいい。なんでもござれ。全てを”かわいい”に回収することは否定しますが、かなりの割合でかわいい。(ちなみに元祖キモかわいいアンガールズは『群青』のMVでダンスを披露しておりますので興味があればご覧ください。スピッツ / 群青 - YouTube*6 *7

 

そういうわけで喜々として曲を選んでいたんですけど、逆に難しい!絞れない!どれもイけそうだから、「これ」と決めるにはどうしたら良いんだろう?!みたいな感じに。

それにスピッツ好きとしては、比較的マイナーっぽい曲を紹介したいという下心があるし、他のメンバーでは選ばないであろうメッセージ性の抽象度が高い初期アルバムや、バリバリ「死とSEX」がテーマみたいな曲から選びたいとも思ったのですが、一応誕生日祝いのつもりだし、「私の下心や欲望」よりも「今、私の目に見える増田さんはこういうイメージ」と素直に思える曲を選ぶぞと念じながら自制しました。小山さんに『おっぱい』をあげちゃったから(語弊があるな?)、増田さんは『海とピンク』にしようかな~ニヤニヤ、ってしてたんだけど、やめたよ!(←どさくさにまぎれて紹介。)それと、3曲のバランスを考えました。これは小山さんの時にも意識していたのだけど、人にもスピッツにも多様な面があるから。*8

 

では、ようやく、1曲目。

 

1.ライブ後である今一番「ふと思い出す増田さん」な曲

『謝々!』(シングル『冷たい頬/謝々!』、アルバム『フェイクファー』収録)

謝々!

謝々!

謝々! - スピッツ - 歌詞 : 歌ネット

ライブで感じたことと、増田さんの口癖「ありがとう」から選びました。

まず、ライブで、いやいやこっちが「ありがとう」を言いたいよってすごく思ったので、そういう気持ちが一つ。

そして、この曲のやさしいだけじゃなくて強いところ。で、強いんだけどやさしいところ。

 

終わることなど無いのだと 強く思い込んでれば

誰かのせいにしなくても どうにかやっていけます

 

「ですます調」の混ざり具合も増田さんを思わせるバランスでした。とても強くて潔いことを言っているのに、ちょっとほっとする雰囲気。

 

大空に溶けそうになり ほら全て切り離される

鳥よりも自由にかなりありのまま

君を見ている

 

というところなんかも、言語化できない感覚へと羽ばたく増田さんと重なりました。増田さんはこんな感覚にさらっと到達できそうな気がする。

 

くす玉が割れて笑い声の中

君を見ている

 

という最後の祝祭感あふれる音がたまらなく好きなのですが、ここにはライブの最後にNEWSを見ていた時の自分の気持ちを思い出します。文字通りくす玉が割れたようなキラキラが舞い降りてくる幸せな歌声の中で、ぐっと来ていた増田さんを見ていた気持ちを。

そして曲調。言葉で言及する能力が残念なので、つい歌詞の話ばかりしていますが、曲調がイメージと合わなければ選んではいないわけで。曲全体もかわいくてやさしくて力強い。ちょっと切なくなるところがあるのも好きです。

まず、ジャブとして、『謝々!』でした。

 

2.今一番「アイドルまっすーに歌ってほしい」曲

涙がキラリ☆(シングル『涙がキラリ☆*9、アルバム『ハチミツ』収録)

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涙がキラリ☆ - スピッツ - 歌詞 : 歌ネット

「もっと感じさせてやるよ」的なコレ言わせたい系歌詞の曲を選びたい気持ちとも戦って、そして勝ったよ…。(←あきらめきれないものだから、しつこく言う。) 

”アイドル”というのが増田さんの主たる顔であって、その面にすごくぴたっとくるのではないかと選びました。この絶妙なかわいさを”アイドル”全開で歌いこなせるのは増田さんだ!とね。

 

同じ涙がキラリ 俺が天使だったなら

星を待っている二人 せつなさにキュッとなる

 

同じ涙がキラリ 俺が天使だったなら

本当はちょっと触りたい 南風やって来い

 

もうキラッキラ!そしてちょいエロ!でもってかわいい!

アイドルッッ!!(スピッツはアイドルではないけど!)

「俺」と「天使」という語感のギャップも増田さんに似合うなーと思います。

これ以上私が言う必要あるかな?ってくらい、個人的には違和感なし。現状。

 

そしてね、シングル『涙がキラリ☆』発売日は7月7日なんです。スピッツ的七夕曲。クリスマスなんかより七夕が恋人の日であるという話(ニュアンス)をタモリさんに熱弁していた草野さんを思い出す。そういう季節にマッチするところもあって、3曲選ぶにあたっての絶対に外せない軸となる曲として位置づけ。

 

3.今一番「増田さん(素)」な曲

『みそか』(アルバム『スーベニア』収録)

みそか

みそか

みそか スピッツ 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索*10

今回増田さんをイメージしながらざっと曲をピックアップした時に、アルバムの最後の曲を何曲か選んでいました。最後の曲の、ちょっと大きな何かに向かう意志を感じ、かつ、ひらけた印象の曲調が合う気がするのかもしれないです。その中から泣く泣く厳選。

この曲は特にファンタジー的感覚が少なくて、ストレートな言葉が入ってくる、ざらっとした手触りの素材だけでできているという感じがする曲だと思いました。音もそうだと思う。

メインにアイドルとしての増田さんイメージをぶつけた曲をもってきたので、あえて最後は無色の素材勝負にしたいなと。

 

君をさらっていこうかな 例え許されないことでも

 

という、キュンとさせる部分もありますが、それはここだけ。

 

輝け 不思議なプライド胸に

 

周りに合わせない方が良い感じ

 

とかは増田さんはこうだな、と思ったり、増田さんをこんな風に応援したいな、と思ったりします。

 

約束 ひとつを抱きしめて

テレパシー 野ざらしあきらめず

 

越えて 越えて 越えて行く 命が駆け出す

悩んで 悩んで はじまるよ 必ずここから

混ざって 混ざって でかすぎる 世界を塗りつぶせ

浮いて 浮いて 浮きまくる 覚悟はできるか

 

もう、この疾走感ある音がたまらないし、繰り返されるフレーズも草野さんの声の溶け加減もたまらん!(個人的には浮いて浮いて浮きまくってやる!と妙な自己肯定感がわいてくる。覚悟は…できてないけど!)

 

あと、増田さんは何度も困難な経験をしてきていて、それを何度も乗り越えてきているんだよなぁ、と。たまにラジオでリスナーの方からの相談があったりすると、すんごいやさしく丁寧な答え方をしていて。実感がこもっていて、一足飛びにはいかないような、エンタメ性にはとぼしい、とても地道な答えだったりします。それに毎度ギュンとしている。そういうイメージにも、何度も何度も繰り返すフレーズが合うような気がしました。

 

もっと手が届かないくらいかっこいい曲を選んでも良かったのだけど、ちょっと身近に感じる曲にしてしまったのは私のエゴかも。そんな増田さん、想像するだけでかっこ良すぎるんだもの。耐えられなくてゴメン!(何の告白。)

 

と、いうことで、30歳の増田さんをこんな風に見ていたよ、報告でした。

31歳が増田さんの身となり力になる1年になりますように

 

 

 

ちなみに、今年はスピッツ結成30周年ということでスピッツ界隈は祝賀ムード満載です。シングル集も明日7/5(水)発売!*11 それに伴い、まさに今TOWER RECORDSのカフェ*12 でコラボカフェ『SPITZ 30th ANNIVERSARY CAFE』なるイベント中なんです。
tower.jp

なんとそこで、今回ピックアップさせてもらった『涙がキラリ☆』のイメージによる「”涙がキラリ☆”パフェ」なるものが食べられるのですよ!コレ(左)↓*13

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コラボカフェの開催期間はまだあるのですが、メニューが第1弾・第2弾で入れ替わるため、第1弾の「”涙がキラリ☆”パフェ」は7/7(金)までになるようです。他のメニューは7/6(木)までなのに、パフェだけ1日長いのは七夕が影響している模様。アラザンがキラキラしてるし、ただ甘いだけではない柑橘系パフェってところにキュッとなる☆

まぁ、1,000円するから(うっ)…気軽に食べられないですけど、他にもメニューがありますし、スピッツの曲と映像を楽しみながらくつろぎたい時はぜひ。(しかし休日は混んでいて並ぶらしい…スピッツ恐るべし。)

 

*1:特にタイトルが走り過ぎた…。小山さんごめん(汗) 好きな曲だしマジメに選んつもりだけど、タイトルだけ見るとふざけてる具合が半端ない…。

*2:すっごいこじらせてることを書くと、スピッツの詞についてはできれば語りたくない。外部に向けて語るのはもちろん、自分の内部で限定してしまうことも嫌だと思ってしまいます。スピッツの曲には”よくわかんないまま特別”でいてほしい。だから今回もすっごく雑に書きそうになったのだけど、それは好きな子に冷たくしちゃうような行為であって、やはり自分勝手で失礼かなと思ったので、詞の全体像についても自分の思うところを最小限で何とか書きます。

*3:草野さんはメロディーから曲を作ると発言していたりする模様。

*4:『Rockin'on Japan』2016年09月号、p58、インタビュー:山崎洋一郎ロッキング・オン

*5:音楽と人』2016年08月号、p7、文:青木優、音楽と人

*6:ちょっと脱線する気がするので脚注に書きますが、ちょうど読んだインタビューで草野さんも「俺、ゲイではないですけど、男と女の役割があまりにもはっきり決まっているものに対しての違和感が、子どもの頃からすごいあって。もちろん脳のつくりとか骨格とか、いろいろ違うんだろうけど……文化によってジェンダーの役割ってさまざまで。それを押し付けられるようなことに対しては、いまだに違うなと思うことはあります」と語っていましたのでメモ。それは曲から感じてはいたけれど、言葉にしてもらえると、やっぱり思い過ごしじゃなかった、と安心するというかより腑に落ちるというか。※『音楽と人』2016年08月号、p8、文:青木優、音楽と人

*7:しかし、スピッツのことを書いていると、自分のこじらせ具合を再確認してしまうから、何気につらいな凹

*8:つい偏らせたくなるんだけどね…。今、平行して加藤さんのも選んでいるのですが、バランス的に似た分類にくる曲のどちらも捨てがたくて、いっそ同テーマで3曲選ぶか!と禁じ手を取りそうになりましたが、涙をこらえてどっちかにします。くそー。←どうでもいい。他にもどうでもいいこだわりがいくつかあったりする…。

*9:カップリングが『ルナルナ』だなんて、キラキラ摂取量が限界を超えちゃうじゃないか!

*10:みそか - スピッツ - 歌詞 : 歌ネットは最後の「混ざって」が「ざって」になってる…。

*11:スピッツの全シングル集『CYCLE HIT 2006-2017』発売記念、タワー×スピッツ結成30周年企画 - TOWER RECORDS ONLINE

*12:札幌ピヴォ店、渋谷店、梅田NU茶屋町店、福岡天神店

*13:ちゃっかり、行ってきました。後ろにぼやっと写っているコースターをお持ち帰りできます。

3月11日からの、いくつかの曲(bonobos編)

何事にも浅い人間ですが、今回はその浅さでbonobosの曲の話をしてみたいと思います。

去る3/5(日)にbonobosのライブへ行ったことをきっかけに思いたった話です。bonobosのライブへは東日本大震災前に1度行ったきりだった私にとっては、震災後のbonobosを一気に摂取したことになり、その変化がとても鮮やかに映りました。そこで、その変遷を私がライブで聴いた3曲を元にたどってみたいと思います。

3月11日付近にアップできればよかったのですが、間に合わず。でもこの世界はずっと”震災後”なわけですし…歌詞の中にある「夏至」にこじつけてあげちゃいます。※2017年の「夏至」は6/21だそうです。*1

 

bonobosについて([ bonobos ] ボノボ

音楽出版社サイトより

大阪発のダブ・ポップ・バンド。2001年8月結成当時は蔡忠浩(サイ・チュンホ/vo,g)のソロ・ユニットとして始動。関西を中心に着々と人気を集め、2003年にミニ・アルバム『Headphone Magic』でCDデビューを飾る。スカ、レゲエ、トロピカル・ミュージックなどをルーツとする巧みなダブ・サウンドが多方面で高評価を獲得。その後、メンバーチェンジを経ながら、2015年までに6枚のアルバムを発表。2015年7月以降は蔡のほか、森本夏子(b)、田中佑司(key)、小池龍平(g)、梅本浩亘(ds)の5名編成で活動を継続。2016年9月、7thアルバム『23区』をリリース。

bonobosは震災後すぐにフリーダウンロードできる曲『PRAY for』を制作したりもしてていたのですね!この記事を書くために検索している中で知りました。冒頭にも書きましたが、私自身はbonobosについてはこれまでアルバムを何枚か聴いたことがあり、震災前のライブに1回行ったことがあるだけ。色々知らな過ぎると思いますがご容赦ください。

 

 

まず、この曲から。ライブに行くきっかけになった曲なので、少々長くなりますが歌詞も追いつつ聴いてみたいと思います。 

1)『三月のプリズム』(アルバム『HYPER FOLK』より 発売日:2014/03/05)

www.youtube.com

三月のプリズム - bonobos - 歌詞 : 歌ネット

ゆったりとしたスピードと穏やかで懐かしいようなメロディからスタート。

りんごがね、今年はそれはそれは見事に染まったという

沖でも、それはたくさんの魚の群れを見かけたという

行方のわからぬアイツは、今も帰らんままだそうだが

ほっぺたの赤いあの娘は、ついに花嫁になるのだという

歌い出しから新鮮。話しかけてくるような、夜に読んでもらう昔話の始まりのような。そして歌い手から色々な報告をされていきます。どこの話かもわからないままだけれど、「そっかぁ、そうなんだね」と受け答えしたくなる。「それはそれは」「わからぬ」「帰らんまま」「ほっぺたの赤いあの娘」といった全体的に少し古めかしいくだけたニュアンスの言葉も、昔からあるわらべうたのような雰囲気をかもしだします。話題となるのは普遍的な自然と人間のサイクル。だから時を越える印象があるのかもしれません。「行方のわからぬアイツ」だけが心に引っかかる。でも人生、おめでたいこともあるのです。

お天道様

なんというか、ありがとう

どうもありがとう

感謝をささげる相手も「お天道様」と、プリミティブ。

そして願いと祈りが続きます。

なきべっちょらにずっと降り注ぐのが良いことばかりであることを願い

わたしたちは歌おう、悲しみにドッコイセェと土を盛り

そして、千年の一瞬を狂った渚にまっさらなあかりがつくのを見よう

ここでもあえて「なきべそづら」ではなく「なきべっちょら」*2。方言には古来の言葉づかいが残っているというので、どこかの土地の民謡のような雰囲気もたたえてきます。

そして「ドッコイセェ」。「悲しみ」に対抗するには、なんて日常的な飾り気のない言葉なのか。神聖で権威ある儀式のような特別なことじゃなく、日々の一仕事と言うかのごとくです。でも重いモノを持ち上げる、少しの気合がいるときの声。本当はすごくたくさんの気合がいる重労働なのだけれど、それを「ドッコイセェ」の言葉で和らげて日々の中で処理していこうとする切なさを感じさせるようにも思います。悲しみに土を盛る、という描写からは土葬という死のイメージも浮かんだり。

「わたしたちは」というところからは、みんなで声をかけあって奮闘するイメージもわいてきます。ここの部分の前半はリズミカルなので労働歌のようにも。

そして「千年の一瞬を狂った渚」が、とうとうはっきりと東日本大震災津波とリンク*3。「行方のわからぬアイツ」のことが改めて思い出されます。

すると、一気に脈もリズムも疾走感を増し、

三月はプリズム 鉛色の海に沈黙の詞をなげた

七夕が近づく夏至の夜に集い、ともに汗を拭った

登場する「プリズム」。全体を通してただ一つの外来語。そこで気になるのは「三月はプリズム」とは何を表現をしているのか?ということ。プリズムには太陽光を屈折させ、光の色を分解する機能があります。と考えると、日々にまぎれた情景(一色にしか見えない光)の別の側面をあらわにする存在と展開できるかもしれません。「三月」を東日本大震災の記憶と結びついた月と捉えると、「三月」は日常生活という当たり前の”光”を鮮やかに見せる「プリズム」のような存在であり、その「プリズム」が私たちに気がつかせるのは、慣れきって感じなくなっていた大切な存在についてなのかもしれないし、日々の雑事によって流していた違和感なのかもしれない。あるいは当たり前のように信じていた光(現在やそれに続く未来)が、方向を変えさせられたり自ら変えたりした瞬間を表すこともできるかもしれない。色々思い描けそうです。ただ、少なくともこの部分の雰囲気からは安らかではなく、切実な気持ちにさせられます。声の重なりにも、何か気持ちがざわつく。「三月」という「プリズム」によって、凝縮された濃厚な何かが弾け出すような。それでも海は答えてくれない。

わたしたちはたまさか交わり、そして友達になった

「たまさか」は「偶然。たまたま。」という意味だそう。震災によってつながれた縁なのでしょう。「七夕が近づく夏至の夜に集い、ともに汗を拭った」に続く「わたしたちはたまさか交わり、そして友達になった」、そして悲しみに土を盛る作業を組み合わせると、個人的には津波の被害にあった地域でのボランティア活動が思い出されました。5月に1日だけ参加しただけですが、マスクに軍手長靴で、作業中はサウナ状態。熱中症にならないように注意しあった記憶があります。色々な地域から集まったボランティアの人々が、日中はひたすら土をかき、夜毎に集い歌う様が浮かびました。

なきべっちょらにずっと降り注ぐのが良いことばかりであることを願い

わたしたちは歌を交わし、悲しみにドッコイセェと土を盛り

そして、千年の一瞬を狂った渚に懐かしいあかりがつくのを

「まっさら」でありながら「懐かしい」存在のあかり。それは一度失われ、戻ってきたから。渚につくあかり、ということで、船のあかりのイメージも。

そして一瞬の高ぶりから、落ち着きを取り戻していく。落ち着きを取り戻すのは海なのか心なのか。

時間の速すぎる流れにも意味があるというのか

想い出もぶっちぎるほどに速く訪れる、無遠慮な未来にさえ

少し疲れたような現実にかえったような静かな独白。「ぶっちぎる」という現代っぽい言葉には、つい出てしまった感情、「無遠慮な未来」へのやるせない怒りを感じる気がします。

最後に再び、今度はピアノの乱舞。

わたしたちは歌おう、悲しみにドッコイセェと土を盛り

そして、千年の一瞬を狂った渚にまっさらなあかりをつけよう

「つくのを見よう」と言っていた「あかり」を自分たちの手で「つけよう」と歌って、終わります。

改めて聴くと時折の音が波が引いたり押し寄せたりするように聴こえました。

 

実は、作詞作曲の蔡さんがこの曲に冠することをわりと話しています。(私が抱いたイメージと重なっていても違っていても、それはそれで、ということで…。)

まず、「実際『3月のプリズム』とかは、福島の小名浜について書いてる」*4 とのこと。蔡さんは2011年6月に福島県小名浜でライブをしているようです*5。その後2013年11月に再びライブで小名浜に行ったそう*6。再び訪れた小名浜について「震災直後に一度行ったときは真っ暗だったんですけど、こないだ行ったら車はびゅんびゅん走ってるし、人もたくさん集まってて、元気ではあるんですよ。ただ、生活が元通りになったかと言うとぜんぜんそんなことはなくて。そういう光景を見ながら、俺も震災から3年のあいだにいろんな変化があったけど、ここにいる人たちにもそれぞれの時間軸があって、日々の変化を生きてるんだなってことを再確認したんですね。」*7と話していることからも、たまさか交わった夏至は2011年6月のことで、その後2013年11月に再び出会い…という実体験がベースとなっているようでした。*8

この曲をYoutubeで初めて聴いた時、アルバム『オリハルコン日和』(発売日:2009/04/15)でbonobos暦がストップしていた私は衝撃を受けました。以前はもっと身近でささやかな愛とか愛する人との生活とかそうした中に幸せを見出したり見出そうよと歌っている印象が強かった。*9 もちろんそれは変わらずにあると思うのですが、人との関係性や何かの幅がもっと広がったというか、そんな印象を受けたのでした。さらにアルバムタイトルが『HYPER FOLK』と知って、この印象が確信的なものになり、私が逃していた時期のbonobosを追いかけなくてはならない!と思わされました。そして偶然3/5(日)にあったbonobosライブへ、最新アルバム『23区』は聴ききれず、『ULTRA』と『HYPER FOLK』までをなんとか聴いて出かけたというわけです。

 

そのライブで『三月のプリズム』に続いて演奏されたのがこの曲でした。 

2)『あなたは太陽』(アルバム『ULTRA』より 発売日:2011/12/07)

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あなたは太陽 - bonobos - 歌詞 : 歌ネット

『三月のプリズム』の前、2011年12月に発売されたアルバムに収録されている、12分以上ある曲。『三月のプリズム』よりも、祈る想いだけが結晶化されたような曲だと感じました。賛歌、と多く評されていますね。管楽器の高らかな音。

歌詞の中にある具体的な体験は、出だしの子どもたちのシーンのみ。(それと、菜の花。)その後は歌い手による、子どもたちの未来への祈りが展開されます。一瞬の情景が永遠の時空へとひろがったかのような感覚。ライブでは「彗星と巡り会う空」から一つ一つの情景が、幸福な想像であるとともに、実際には手に入らない幻のようにも思え、たまらなくなりました。

冒頭で登場し、最後に何度も何度も繰り返される「菜の花」。ヒマワリが有名ですが、菜の花も、チェルノブイリ原発事故の時から放射性物質の吸収を期待されて植えられている花*10東日本大震災を境に色々なものがその内包する意味を変化させましたが、菜の花もその一つ*11。『おぼろ月夜』で「菜の花畠に入日薄れ」と歌われていたような、のどかなだけの風景ではいられなくなってしまった菜の花畑。しかし「デタラメな歌を歌ってる」子どもらがいる菜の花畑は、どういう背景があるとしても「圧倒的な輝き」があるという、複雑に幸福な心境を感じます。

ライブでのこの2曲の流れは本当に印象的で、完全に圧倒されのみこまれました。

 

そして最新『23区』へ。(ライブでの曲順は、すぐ後ではなかったかもしれません。アンコールだったみたいです!)

3)『23区』(アルバム『23区』より 発売日:2016/09/21)

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23区 - bonobos - 歌詞 : 歌ネット

最新アルバム『23区』は今流行として定着したシティポップ路線と評されることも多い模様*12。アルバムを聴かずにライブに行った私も、以前の曲から『23区』収録とおぼしき曲の演奏に入った瞬間に、雰囲気ががらっと変化するのを感じました。そしてその時、「あ、醒めた」となんとなく思ったんです。その印象が頭の中を駆け巡って、今のシティポップは何かから「醒めた」後の世界を歌っているのだという強い思いに駆られました。何から「醒めた」のか?それは、東日本大震災によって崩された、当たり前だと思っていた”日常”からなのかもしれないし、あるいは何かが目覚めたような気がした自分や社会からであったり、”絆”のようなものからなのかもしれない。それはわからないけれど、とにかく、何かから「醒めた」後に、それ以前とはイコールではないものの、再び訪れた”当たり前の日常”を、「醒めた」状態で何とか生きていこうとしているように感じたのでした。

今シティポップど真ん中にいるような人の歌声にクールな印象を受ける気がするのは、そういう「醒めた」感覚との相性が良いのかもしれないとも考えたり。そうした人達には、何も信じていない孤独や、すごく身近なもの(”仲間”など)だけへの信頼を抱えている印象が私にはあります。そして、MVで夜に徘徊したりドライブしがち。一方、甘い声でシティポップを歌う人達には「醒めた」世界の認識上にある、ささやかな魔法のような儚さを感じます。そこはかとない現実味の薄さと浮遊感。MVは夜の遊園地のような幻のような光がきらめくイメージ。今のシティポップには夜が似合う。

とにもかくにも、なんだか「醒めた」というキーワードによって、私にはストンと入るものがありました。

 

でも、bonobosの『23区』には現実味のある人肌くらいのあたたかさがあって。「醒めた」後でも世界を自分なりに愛し生きていこうとする気持ちが感じられました。それと同時に孤独をかみしめているような気持ちにもなる。私には、以前のbonobosの歌詞の中には愛する人との境界を感じさせず溶け合っているイメージがわくことが多いような気がしていたのですが、この曲からはとても信頼している人達や大切な人と一緒にいても拭えない孤独が描かれているように思いました。それでいて「クソったれ、愛してる」。そうしたところが「醒めた」後の世界の複雑さであり、都市的なのかもしれません。

 

3曲を追ってみて

各曲がもつ時間感覚や態度には特徴があるように感じます。

人生を超えて未来と溶けあい、祈りや願いを歌った『あなたは太陽』

人間サイズになって現在と過去との距離が生まれ、意志を感じる『三月のプリズム』

そして生活する個人の感覚に戻り、孤独と葛藤を抱えた『23区』

そこからは、あまりの出来事をいかに自分の中に落とし込もうか試行錯誤した時から、少し時間がたち記憶や感覚を改めて捉えなおした時を経て、記憶が日常に溶けて混ざりながら生きる今へ、というような移り変わりも感じ取れる気がしました。蔡さんとbonobosの曲を通して、何だか、震災後の人間の変遷の一例を見るような気持ちになる。3曲だけしかピックアップしていないので、どんな物語だって都合よく組み立てられてしまうし、実際にざくっとした感触ですが。

 

私は関東住みだし親族や友人が直接被害を受けたわけでもないです。けれど、その立場なりの東日本大震災の影響というものがあって、そして今日まで移り変わってきています。東日本大震災に限らず、その人にとって大きな影響を与えた何かと色々反応しあいながら、時に時間感覚を大きく変えることで対応しながら、生きていく。どの感覚が良いとか悪いとかではなく。変化したらいけないとか変化しなきゃいけないとかでもなく。

 

ちなみに!bonobos 日比谷野音ワンマン(仮)が8/12(土)にあります。しかもチケットの一般販売が6/27(日)からだそうです。全く宣伝効果はない記事だと思うけれど、ねらって書いたみたいになっていてびっくり(笑)ライブ、絶対素敵なんだろうな。*13

最後に、3/5(日)のライブの感想を追加させてもらうと、『THANK YOU FOR THE MUSIC』がめっちゃかっこいいアレンジになっていて上がりました!私がbonobosに出会ったアルバム『electlyric』収録曲で、今も好きな曲が、新たな息吹を吹き込まれて定番であり続けていることがうれしかったです。

↓この中に私もいたのか!w

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*1:この記事を上げるのにちょっとだけ躊躇する気持ちがあったのですが、先日チェルフィッチュの『部屋に流れる時間の旅』を見て気持ちが後押しされました。何時の感情も確かに在ったもの。しかし時間は流れて行く。※記事内容を寄せているわけではないです。

*2:「べっちょ」というのは仙台等の東北方面の方言であるもよう。ここまでしか調べていないので、もしかしたら「つら(顔)」=「ら」ではないかもしれません。

*3:国土省の資料http://www.mlit.go.jp/common/000227028.pdfに、「今回の津波は貞観津波(869年)クラスかそれ以上で、発生頻度は500年から1000年に一度。」との記述。

*4:いまっぽい〈黒さ〉で都会を描く――新生bonobosが表現した東京という街 - OTOTOY

*5:FEATURE | 蔡さんと過ごした夕べ - 小名浜発|地産クリエイティブを伝えるウェブマガジン

*6:bonobos 6th Album「HYPER FOLK」特設サイトでの蔡さん「たしかに『ULTRA』のときはわりと引いた視線で書いていたような気がします。今回も基本的には変わらないんですけど、去年の11月にライヴで福島県小名浜に行った影響はあるのかもしれない。」

*7:bonobos 6th Album「HYPER FOLK」特設サイト

*8:ちなみに、MVで結婚式の招待状は福島県いわき市から届くのですね。実際に福島県での撮影も行なったそうです。bonobos 6th Album「HYPER FOLK」特設サイトでの、蔡さん発言に「たとえば「三月のプリズム」のPVを福島県で撮ってたりとか、そういうことはもちろんあるんですけど、歌詞や曲で何かメッセージを伝えたいっていうことはあんまりなくて。」と。

*9:そして私はそれがちょっと苦手だったのです。『electlyric』でbonobosを知ってからゆるく追っており、『オリハルコン日和』頃が初ライブでした。その頃の曲の雰囲気からも感じてはいたのですが、ライブでの”幸福感”がものすごくて、かえって少し怖くなりました。冷静に考えて私はそんなに幸せじゃないし、世界も私にはそんなに幸せそうに見えない。なのにこんなに幸せな気持ちになることが、まるで洗脳されたか酔っぱらっているかのようで。ほんとにほんとに語弊がありますが。それだけ影響力のあるライブだったのだということですし、あくまで私個人の中での葛藤です。ただ、そうしたひどくこじらせた感覚があって以降『三月のプリズム』をYoutubeで聴くまで、bonobosからなんとなく足が遠のいていたわけです。

*10:余談ですが、チェルノブイリの事故と東日本大震災をからめて描いたマンガ、萩尾望都『なのはな』は2011年発売されました。歳は関係ないとは思いつつ、まあまあご高齢なのにこんなに新鮮な反応をすることができる萩尾望都はやっぱりすごい人だと思い知らされました。

*11:INTERVIEW(3)――自然に対抗するための強い力 - TOWER RECORDS ONLINEでの蔡さん「例えば、“あなたは太陽”という曲に出てくる〈菜の花〉という単語一つ取ってみても、原発事故の後と前とではニュアンスが違うじゃないですか。菜の花やひまわりは放射能を除染してくれる花だ、みたいなふうに言われたりして。でも、原発事故以前は世間一般には誰もそんなふうには菜の花を見てなかったわけで」

*12:解散の危機を乗り越え、生まれ変わったbonobosと時代の関係 - インタビュー : CINRA.NETより蔡さん「今回のアルバムって、ブラックミュージック寄りの音楽性とか、『23区』っていうタイトルからして、いわゆる「シティポップ」とのリンクでも語られると思うんですね。ただ、別にbonobosがそこに寄せたわけではなくて、そもそも現在の「シティポップ」の背景とも言うべきSAKEROCKからceroに至る流れとbonobosの歩みっていうのはずっと並走していて、だから今リンクが起こるのは自然なことだと勝手に思っているんですよね。」加藤さんは音楽部で『Cruisin' Cruisin'』を紹介したらしいじゃないですか!加藤さんは直球でかっこいいのが好きなんだなー(印象)。私はちょっとへろってるのが好きだ。

*13:私はスケジュール的に行けない可能性が高く残念です…。