キラキラの方へ。

しがないミソジのゆるふわ雑記

アイドル的な何かを想う、コーネリアス『あなたがいるなら』

コーネリアスの『あなたがいるなら』にぐっと来ています。

曲として良いのはもちろんなのですが、詞がまたおもしろい。一般的な恋愛に限らず、アイドル的な存在にもはまってきます。目下”アイドル”にはまっている人間として、感想を記しておこうと思います。浅はかな知識にて。

 

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ちなみに、Cornelius(以下、コーネリアス)について、ざくっとした説明はこちらをご覧ください。→コーネリアス - CDJournal 取り上げておきながら、私自身は世代だったからかろうじて知っているミーハー知識しかありません…。

コーネリアスは、6/28にアルバム『Mellow Waves』を発売予定。2006年「Sensuous」以来のオリジナルアルバムだそう。そして、収録曲の中から、この『あなたがいるなら』のアナログ盤を4/26に発売しています。 

 

ということで、ただの感想をば。

私が知ったのはMVが公開された5/12。Twitterのホットワードに上がっていたので気がついた程度のリスナーです。で、今のところ、MVを通して聴いているのみ。が、初聴きで心つかまれ、それと同時に「ずいぶん親しみやすい曲だなぁ」と驚きました。(一応アルバムをかすってきてはいるものの、熟知しているわけではなく、この頃の動向も知らないので、自分にある限りの知識に照らしての”驚き”なのですが。)これまで私がイメージしてきたコーネリアスの曲よりも、歌として非常に聴きやすい。聴きやすいんだけど、普通じゃない。よくわからないけど、おもしろい。そんな感覚。

『あなたがいるなら』は専門性がある方々や同業者であるミュージシャンから、こぞって評価されたり分析されているようでした。久々のリリースで、待ちに待った素材が来た!ってところもあるのかな。知識や分析力をもてばさらにおもしろく聴ける曲なのでしょう。

しかしながら私は自分自身の感覚について語るのみ…。でもね、『あなたがいるなら』はそんなくらいの耳にも届く何かがあると感じるのです。むしろ、今回は意識的に間口を広げて、多くの人が引っかかりやすくしている気さえしています。それなら乗っからねば。(注:私がたいした耳じゃないからって、いつも私が好んで聴いている曲を貶めるつもりはありません!)それにしても小山田氏は、なんでそういう気分になったんだろう?

 

アイドル的な存在を想って聴ける理由。それは、詞*1 の影響です。(そりゃそうだろう。)

作詞は小山田氏ではなく、元ゆらゆら帝国坂本慎太郎さん。 坂本慎太郎 - CDJournal *2

音にのる言葉数が少なくて、曲を聴いているだけで充分に言葉が伝わってきます。そぎ落とした一言一言が曲を聴く中でしっかり落ちていく。そしてそのような言葉の入り方が、詞の内容ともしっくりくる。「なぜ~だろう」と自分への問いを発することで、一つずつ確かめ、かみしめるような。小山田氏の歌い方ともあってますね。独り言みたい。

そして、シンプルな言葉の構成は、繰り返されることで自然とインプットされてしまう。そうすると、構成が変化したり解体されても、後に続く言葉が聴き手にもなんとなくわかる。だからあえて言葉を省略することが、かえって豊かな余韻を与え、すごく効果的になっています。また、聞きとろうとしなくても言葉がすっと入ってくることは、曲に入り込むことを容易にさせる。言葉と音楽が溶け合っている幸せな曲だな、と。

でも、一般的な歌のメロディとはちょっと違うのかも、という気もします。”置いていく”ような声の入り方。言葉の切れ目や音の高低が、詞とリンクしているようないないような絶妙さがあります。そのへんは、やっぱりコーネリアスだなぁ、と勝手に思ってみたり。

 

内容については普遍的な誰かを想う気持ちを歌っているようでいて、1点、変わっているなーと思うところがありました。それは「みんな君を好きなんだ」と歌っている前後。ここだけくせが強いと言うか、一般的なラブソングから少しはみ出ているのでは、と。

「また誰か 君の噂している」「みんな君を好きなんだ」という表現は、ここ以外の「あなた」を想う言葉とは距離感が違うように感じます。主語が「誰か」だったり「みんな」だったりして、主語がない他の部分とは、まず視点が異なる。そして書いていて気がつきましたが、ここは「あなた」ではなく「君」なんですね。多くの人の中にいることを意識しているときは「君」で、自分と対象者しか意識していないときが「あなた」?呼び方でも距離感を変えています。内容的に「君」の部分は良いポイントになっている、というか、ちょっと違う風を入れているなぁと思います。いったん「君」と距離を置いてから、さらにぐっと対「あなた」の世界に入る。後に続く省略し解体された言葉からは、自分の思考に没入していく感覚を受けます。

なぜあえてこの部分を?と考えたとき、Facebookの「いいね!」などを象徴として揶揄されるような、共感を求める気持ちが強い”現代人像”がうかびました。みんなが好きだからって何なんなんだとも思いますが、肯定感を得られて安心できるのかな。(私もその気持ちはわかるけど。すぐTwitter見ちゃう、みたいなね。*3)「みんな君を好きなんだ」と言った後にさらなる深みに没入しているのは、そうした安心感を得られたからだと考えると、ある種の悲しさも感じてしまう。”現代人”の感情に寄り添っているのか、皮肉めかしているのかはわかりませんが、効いているなと思います。

で、とにかく、ここが、アイドル的な存在に合致してくるわけです。

私自身が聴いてまず思い浮かんだのは、つい先日の小沢健二氏の復活劇のこと。その人気に改めて気づかされました。逆(?)に、この詞に小山田氏を想う方もいるそう。なんだかにくいつくり。一方、もっと純粋に、子どもへの想いと重ねて聴く方などもいらっしゃるよう。確かに子どもの話題って親類縁者に広がりますし、「あなた」に向けられている感覚との親和性も高そう。やー…素敵です。

ついでに言うと、「あなた」への想いは一方通行でも成立するような、相互のコミュニケーションや具体的な接触が徹底して省かれているところもおもしろいなと思います。まんま「いる」だけで、”存在”しているだけで良い、ということになっている。もちろんその境地に至るまでの過程と理由がなければ、そうはならないものの。

そんな特長によって「あなた」には二次元から身近な存在まで、なんでも投影できるようになっている。色々な好きがあふれている昨今、強いのではないでしょうか。

さらに、言葉を比喩的に捉えれば、もっともっと色々な受け止め方ができそう。多様な解釈を許すのが”名画”って聞いたことがありますが、歌にもそうしたところがあるかもしれないですね。思えば、私はこれまでコーネリアスの曲には結晶のような印象を受けていたのかもしれません。もうこれ以上足したり引いたりできないような結晶、というような。だけど、この曲は結晶でできたコップみたいに聴く人の想いも受入れて完成させてくれるゆとりがある気がします。坂本慎太郎さん、ありがとう。(←そこ。)そのゆとりを生み出しているモノが何なのかよくわかんないくせに、勢いほめ。

 

言葉については書きやすいから、ついつい長くなりました…。持ち合わせのないボキャブラリーで、他の要素についてもちょこっと書いておきます。

 

まず、言葉だけでなく、音もそぎ落とされているように思うのに、とても豊かに感じるのがすごいな、と。音が入るタイミングとかがキモなんでしょうか?音についてもある程度絞ることで、言葉と同じように聴き手がだいたいの構成要素を覚えてしまうのかもしれません。だから、ピタッと止まったり連動したり重なったり…そうした展開をいっそう楽しむことができるのかも。言葉を省略した部分に代わりに音が入って、代弁するというか補うというか膨らますところ、にくいです。ゆらぐような効果もすごく好き。(ギターについては他の方のコメントを参照したい…汗)

でもって、音と連動したMVがシュールで楽しい。ディレクターは辻川幸一郎さん*4 とのこと。音が絞られているから、こういうMVを思いついたのかな、なんて思ったり。音とモチーフがしっかりと対応しあっていて、MVからも音を感じられます。この音をどうしてこのモチーフで?と想像しても楽しめる。特に、小山田氏と女性コーラス(?)の声が、ラインで表されているのがうまいなーと感心しました。対応関係を分析して書き出してる方もいらして、楽器知識が薄い人間には大変ありがたく、おもしろかったです。ここで感謝。

あとね、全体的にセクシーでユニーク。どこをセクシーと感じるかは人によって違いそうだけど。私はおっぱいのところ(勝手に認定)はちょっと笑っちゃう。ユニークが勝つ。個人的No.1セクシーは、最後に声を表すラインが一つになって輪を描くところ。絵の中の女性(と、点滅する女性)が後姿なのも「噂している」距離感っぽくて雰囲気があります。オシャレなだけでは出せない余裕が、セクシーさやユニークさやシュールさによって生まれていると思います。

MVでは、空間全体が回転し始めるところがすごく好き。トレモロと言うのでしょうか、細かく繰り返される音と一緒にぐるぐるぐるぐる回って別世界に飛ばされそう。最後ゆらぎのある音に戻って、渦巻いたように終わるところも好きです。らせん状に渦巻いて終わることで、最後の最後で曲を不思議にからめ取ってまとめあげているように感じます。*5 あ、あと白黒反転効果が良いですー。

 

そんなこんなで、コーネリアスの『あなたがいるなら』を聴いてみました。書いてみると、総合的にツボだったみたい。

アルバム楽しみです。でも、先発の曲がすごく好みで期待が高まっていたものの、アルバムで聴いたときに「……」となったりした経験もなくはないので、この期待がどう収束されるのかわからないですけどね。

 

さて、アイドル的な立場にいる方々は「あなた私の幻を愛したの…」*6とかって、時に他者に想われるのが重くなったりすることもあるんじゃないかなーと心配になったりしますが(ネガティブ)、そんな風には気に病まず勝手に好きにさせといて良いんだよ、という結論にいたりそうです。この曲を聴いていると。その存在だけで「この世はまだマシだな」とか思わせてくれるなんて、すごいことだと思うから。*7

 

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*1:MVから聞き取っている段階なので、以降引用する言葉は正確ではありません。

*2:坂本慎太郎さんと言えば、変ラボの『あなたもロボットになれる』ですね、NEWS的には←。個人的にはゆらゆら帝国の最後のアルバム『空洞です』が大好きです。アートワーク含め。ゆらゆら帝国はほぼこれしか聴いていないのですが、このアルバムは本当に好き。(今度他のも聴こう。)そして、今回認識するまで存じ上げなかったのですが、salyuさんの「salyu×salyu」名義のアルバム『s(o)un(d)beams』(2011)はコーネリアスプロデュースで、そこにも坂本慎太郎さんが参加されていたんですね!ラジオで『ただのともだち』に一耳惚れしてCDを借りたのに、この曲が「words:坂本慎太郎 / music:小山田圭吾」だという事実については気持ちいいほどスルーしておりました。基本前面に出ている情報しか入らないんだよね凹 文章読まない系だもんで。

*3:スピッツの『グリーン』が頭を駆け巡っておりますが、その話はまた別に…。

*4:KOICHIRO TSUJIKAWA 合ってる?

*5:ピコ太郎氏の「天に召される」話じゃないけど。

*6:©杏里『オリビアを聴きながら

*7:そういえば、先日(あ、5/16)のKちゃんNEWSで「好きになってもいいですか?」というリスナーさんの質問に対し、加藤さんがステキ声で迷いなく「いいよっ」と言い放ったことに、地味に衝撃を受けたことを思い出しました。ファンの想いをさらっと受け止める中に、覚悟の裏打ちのようなものが感じられて。(手越くんなら通常運転なのでそこまで驚かなかったと思うのですがw)彼らにとっては当たり前なのかもしれないけれど、すごいなーアイドルって、と改めて。よっ!(軽い)…そして、この部分には何の含みもありません。広島、楽しんで!