キラキラの方へ。

しがないミソジのゆるふわ雑記

幻が醒めてしまうまで:『madoromi』がまどろめるのは

マイペースに『madoromi』について書いておきたいと思います。入国ラッシュが落ち着いてきたであろう今、…と書いていたらアルバムと連動キャンペーンの情報までがどどっと押しよせてきた今、なんですけれど。実は私まだちゃんと入国してないんです(汗)めずらしく少々立て込んでおりまして、気持ちが持っていかれてしまうと仕事に支障が出るかもしれない…という恐れから。(単に時間の使い方と気持ちの切り替えがヘタなせい。)で、ようやく少し余裕ができたので、ぼやーっと考えたことを入国前に書いておこうと。専門的でも何でもないから、「『madoromi』やばい。」の一言以上の意味があるのかどうかわからないけど、いいじゃないか、素人があれこれ考えても。ってことで、よろしくお願いします。
あ、『madoromi』とはNEWSのシングル『LPS』の通常版に収録されている曲です。(みんな知ってる。)

 

まずは私の感想から。
ざっくり『madoromi』の空気感が好きだなーと思っています。奥底に何か抱えながら、最終的には羽根布団みたいなふわっとした存在感になっているところが、すごく。羽根布団じゃ情緒がないけど、相手を包み守りあたためて、けれども圧はない、そんなところが。まどろみだけに☆(うまいことは言っていない。)そこで、その絶妙な空気感を生み出しているものが何なのか考えたいと思いました。

 

詞における、「君」と「僕」の距離感

madoromi - NEWS - 歌詞 : 歌ネット
詞の中には「君」について具体的なことが何も書かれていないことに気がつきます。同様に「僕」についての説明もない。ただただ「僕」の想いがつづられていきます。状況としてわかるのは、「僕」は「君」が好きで、二人には短くはない期間の、次いつ会えるのかわからない別れの時がせまっていることだけ。*1 二人の関係性については聴く人のイメージにゆだねられています。
この曲を聴いたとき、“手紙”みたいな詞だなぁと思いました。“置手紙”の方がぴったりくるかな?「君」を残して去る「僕」が、まどろんでいる「君」を起こさないようにつづっている置手紙、あるいは語りかけている別れの言葉のような。そんな雰囲気。
そう感じさせる理由の一つは、すでに書いたように「君」に宛てた「僕」の想いのみが語りかけるようにつづられていること。手紙なら第三者に自己紹介や状況説明をする必要はないわけで。もう一つは、詞の中にストーリー的な時間経過がないこと、かなと思います。「こうだったけど、こうなった」みたいな描写はなくて、一気に書き上げたような内容なので。
“手紙”っぽいことは、「君」と「僕」の間にワンクッションはさむ効果がある気がします。“手紙”は「君」に伝えたい「僕」のメッセージであって、そのままの「僕」の内面描写ではないから。

詞を読むまで気がつかなかったんだけど、「きみはきみのままで」の部分だけ漢字ではなく平仮名の「きみ」になっています。そのため、ここだけ「僕」の言葉ではなく、引用のような、定型句やよくあるワンフレーズ的な表現のようにも受け取れる。この言葉を「君」に送る、という感じの。そう思って聴くと、手越くんのこの部分の歌い方がすっと収束しているのがより切ない。

 

ただし、“手紙”っぽくないところもあります。

幻が醒めてしまうまで
せめて グッバイ ah グッバイ ah

「ah」という感嘆詞もあって、ここに一番「僕」の感情があふれている。気持ちを抑えて「君」にメッセージを送っていたけれど、不意にメッセージではなくなる瞬間。
ここの詞って、けっこう不思議な気がします。「せめて」の後に続くのは願望のはず。だけど、続くのは「抱きしめたい」とか「笑って」とかではなく、「グッバイ」という別れの言葉。つまりは別れを告げることもまともにできない状況なのだと思われます。
その前にあるのは「幻が醒めてしまうまで」。ということは「幻」の中でしか別れを告げられない状況、という風に読める。二人は「幻」例えば夢の中でしか会うことができない関係。「僕」は「君」の夢に訪れ、「僕」を想って流がす「君」の涙に心を痛める、みたいな状況なのかなって。
だけど最後に、「頬を濡らした涙は 君の明日を咲かせるだろう」と告げる。そうであってほしいという願いを込め、そっと自分自身に言い聞かせるように。*2

安直な人間なので、二人の関係を裂くのは生死なのだろうと捉えていました。「夢枕に立つ」的な。でもNEWSだけに、「僕」が異次元の存在という捉え方もありですね。アルバム情報を聞くと、なおさらw 「空に浮かべた船」は比喩ではなくそのままの意味で、この曲は“かぐや姫”ならぬ“かぐや王子”の別れの言葉なのかも、なんて。どちらにしろ、ばり切ない。
そして、そういう「君」と「僕」のほんのり間接的な関係の描かれ方が、『madoromi』の空気感のベースになっていると感じます。


NEWSの歌声における、内なる想いと表現の間

『madoromi』の声はやさしい。歌についてもノー知識なのですが、そう感じます。(強行。)
例えば『恋を知らない君へ』のように、あふれる想いを吐露するような歌い方ができるNEWSが、『madoromi』ではとても抑制的に感じます。詞の世界観もあって、届けたい気持ちはあれど、直接強めに訴えかけたいというよりは、寝顔に向けて話しかるような、半分独り言のような、近くに感じる歌声になっている。
まず、各メンバーの歌声が全体的に空気感ましまし。加藤さんの声のあたたかさは安心感。小山さんの息のもれにはささやき感がすごく出ていて、世界観をより鮮やかにしているように感じます。手越くんの声もいい。のびやかでありながら、手越ビブラートはひかえめ。たぶんしっかりしたテクニックのベースの上にあるナチュラル感。*3
もう一つ、やさしい雰囲気を出すのに絶大な効果を発揮しているのがファルセット*4 の多用ではないでしょうか。増田さんをはじめ、声の繊細さが強調されています。

そうやって、抱いている悲しみや葛藤をそのまま押し出すのではなく、どうやって「君」に伝えようかと一息置いてから発しているようなところ。ここにも空気感の元があるように思います。

 

個人的に、ライブでは歌い上げたいところをなんとかこらえてもらって、吐息交じりで歌って!お願い!と念じています。ライブならではの張った声が大好きだから悩むところだけど、この曲だけはやっぱり。是非『madoromi』だけマイクのセッティングを変えていただいて、お願いします。その前に、私はライブに入れるのか?という根本的な疑問は置いておいて。入れなかったら、円盤で見るからさ…(涙)


曲における、歌と演奏のメロディーの関係性(言葉の使い分けがうまくできない…汗)

注:専門的なことが全然わからないから、さらに感覚に頼って書きます。
『madoromi』は、歌声に対して、演奏がいい意味で寄り添い過ぎていないように感じました。例えば、1番の最後、増田さんの「咲かせるだろう」が終わりきらないところで、後ろの演奏は次の展開に移って行ってしまいます。そのため増田さんの「咲かせるだろう」がその場にふわっと残されて、浮遊して消えてゆく感じがする。
2番に入るとリズムも加わって盛り上げつつスムーズに流れていくのだけれど、増田さんの「照らす明かりになる」のところでふっと引いてゆく。1番の同じ部分よりも潔く。さらにその後の押し寄せっぷりが見事。そのタイミングも。
最後の手越くんのパートでも、1回目の「咲かせるだろう」の途中では、増田さんのときのように一足早く次の展開を導き、最後の「咲かせるだろう」では、逆に手越くんのメロディーラインがちょっとしたずらしを入れてくる。定石ではない、ベタさにまぎれない、すとんと落ちきらない感覚が印象に残ります。演奏はここが落ち着いてからすっと現れて、盛り上げ過ぎずやさしくおさめる。
歌のメロディーとは異なるメロディーが奏でられているのも素敵です。1番の「風に吹かれて 見えない場所へ」の後ろでゆるやかに流れるメロディーが好き。浮遊感が出る気がする。

こうした歌と演奏の関係性の“間”というか絶妙なズレのようなものも、外せない効果になっているのかなぁと。(音色とか、きっと他にも色々あるんだろうけど、私の能力ではここが限界だった…。)

 

そんなこんなで、詞、歌声、曲全体がつかず離れずの(…と言うよりは、くっついているけど離れていると言った方が合うかもしれない)絶妙な距離感でいてくれることがあいまって、この空気感が生まれているのではないかと思いました。
まどろめる、これは。間違いない。こんな風に考えるまでもなく。
作詞作曲のKacoさん、編曲のトオミヨウさん、そしてNEWSとNEWSチームのコラボ、すばら。

 

最後になりますが、イントロが舟をこぐ音に思えてならないんです。「空に浮かべた船」は「舟」じゃなくて「船」だから、大型っぽいんですけど、私の中では櫂でこぐような小さな舟のイメージ。掛け合いみたいなピアノとリズムの音が、櫂をこぐ音と舟が進む音のように感じています。イントロ終わりのピアノの高音は、進んでいた舟が目的地に着いて止まったということ、あるいは舟先が船着場か何かに軽くぶつかったところかなぁと想像。迎えの舟が到着したことに「僕」が気付いて歌がはじまる…。
実は、これのイントロについての妄想が、一番書きたかったことだったりしました。(知らんがな案件。)イントロ、好きなんだよね。寝息と鼓動みたいにも聴こえて、それも良いなぁ。(それにはちょっとリズムが速いかな?)

 

って、ああ!『LPS』のジャケットについて書いてなかったことを思い出しました。「かっこいいよ、君ら…かっこいい」これにつきる←誰。なんなんですか、あの決めすぎない決め顔。もう笑っちゃう。口を半開きにするんじゃない!口を!(ほめてる。)LoveにもPeaceにもSmileにも縁が薄そうな雰囲気をジャケットにもってくるところが、一筋縄じゃいかない大人感…なのかなと。

 

よし、これですっきり入国できる。*5 とりあえず良かった。みなさま、ハバナイストリップ!ぼんぼやーじゅ!すてきな旅を!って、遅くなりましたけど。宇宙旅行に出る前に急がなくちゃ。では、行ってきまーす。

 

 

*1:あえて書く必要はないかもしれないですが、短くないと感じるのは、「忘れないで」「ままで」「時をめくる度に 忘れて行く事があっても」「いつになっても宝物さ」「いつか(中略)なる」などの、時を経る表現が多用されているからです。

*2:「僕」は「忘れないで」と言いつつも、「悲しみなんて」と自分の存在を突き放したような言い方もする。「忘れないで」は「僕」自身の願いでもあり、自分の不在を耐えなければならない彼女を支えたいという想いの現われでもあるのかも。ひたすらに「君」をあんじ支えるメッセージの中に、見え隠れする「僕」の想いがつらい。

*3:「風に吹かれて」のところが無性に好き。

*4:で、あっているのか?

*5:と、書いているうちに、色々と考えさせられることがありましたが、それはいったん置いておきます…。