キラキラの方へ。

しがないミソジのゆるふわ雑記

光について:2017年の美術と、ライブと

年末年始らしく2017年に行った展覧会をふりかえったところ、いくつかの展覧会が”光”に関わっていることに気がつきました。そして、ちょうど”光”をキーワードにして書き留めておきたい2017年の出来事がちらほらあったので、この際まるっと備忘録として残しておこうと思います。

「光について」シリーズ、まずは展覧会とライブのお話から。

 

 

展覧会の光について

2017年に見た中から、光に関わる展覧会をピックアップ&一言感想。

 

[ G/P gallery ] 小山泰介 Taisuke Koyama “Generated X” | G/P gallery

www.cinra.net

一番印象に残ったのは、「様々な場所の水面に反射した太陽光が、レンズの絞り羽根によって9角形の光の粒子として記録される様子を作品化した」*1 映像作品『NONAGON PHOTON(LML15)』。丸い光がきらめいて動いているだけの、具体的な撮影対象がはっきりとわからない映像。最初から最後まで見たわけではないので、ピントがあっている部分があるのかどうかは?でも水面をクローズアップしたり引いたりしながら撮影したのだろうということはなんとなくわかった。おもしろいのはピントが変わると光の集合体としての動きも変化すること。遠めに見て複雑でも近づけばわりとゆっくりとか、あるいはその逆とか、わかりやすい法則があるのかなと思いながらしばし鑑賞。結果的には、途中まではそんな気配もあったのだけど、そう想像通りにはならなかった。安易な単純化はできないものだなぁと思わされた。手法はシンプルだけど、水面の光はエモーショナル。そのバランスが結構好きな折衷感。機会があったら、最初から最後まで通して見てみたい。

 

光をつくる:吉岡徳仁『スペクトル』@資生堂ギャラリー

www.shiseidogroup.jp

EXHIBITION | TOKUJIN YOSHIOKA INC.

話題の展覧会だったらしく混んでいた!*2 入ってすぐの大きな空間に、奥の部屋に設置された装置からこぼれる光が差している。その光はたくさんのスティック状の虹が床に散らばったかのよう。装置にはたくさんの不思議な形のプリズムが埋め込まれていて、奥にある光源が動くと、その虹のスティックが少しずつ変化していく。装置が置かれた部屋の壁にも光が映っていて、大きな空間に映るのとは違うその光の形もきれいだった。大勢の人たちが光を眺めたり写真を撮ったりしている様が印象に残っている。奥の部屋にある巨大な装置は人造でつくり出した”神”みたいだなと思った。多くの人間を魅了するために造られた神。部屋の角に2台あったガラスのベンチも吉岡氏の作品。そこに座って眺めることもできる。だけど、人が多かったことと、先を急いでいたので情緒なく見てしまった。こんな舞台美術の作品があったら見てみたい。こんな映像もあったのね!↓

www.youtube.com

 

物質にある光:大庭大介『大庭大介個展』@SCAI THE BATHHOUSE

www.scaithebathhouse.com

DAISUKE OHBA

ホログラム系の顔料による作品。平面作品なんだけど物質感がすごくある。絵の具としてのやわらかさを感じさせるテクスチャーと、金属的な光の共存がなんとも絶妙。普段平面作品で見ている色と形も”光”。平面作品を”光”や物質として捉えなおしてみたくなる。”行為”と”素材”の関係を見る側になんとなく感じさせながらも、作品の存在感の邪魔にならず、魅力の一部になっている。虹色に変化する奥の部屋の作品も素敵だったけど、特に手前の部屋の『X』の渋いメタリック感と絵の具の感じが好みだった。「アクリル絵具にに独自の錬金術を加えることで、鉛のように鈍く輝くメタリックな質感を生んだ」*3 んだそう。是非The xxとコラボしてほしい…なんて妄想。

 

光と痕跡:北野謙「アーティスト・プロジェクト#2.02『北野謙:光を集める』」@埼玉近代美術館

www.pref.spec.ed.jp

imaonline.jp

光が降り注いでいるようだと思って見に行ったら、定点記録された太陽の軌道の写真だった。なるほど。「[冬至-夏至]を含む役半年間、太陽の光跡を地平線とともに長時間露光で写真撮影している」*4 のだそう。ところどころ途切れているのは天気に影響されているからとのこと。美術館の屋上に設置したカメラの写真も展示してあった。ベースの青が魅力的。都市の風景や新生児を長時間露光で撮影した写真もあったので、それぞれの時間を対比できる。人間や自然のもつ時間の幅や、時間をどういうスパンで捉えるかについて思いをはせたくなる。

 

光と世界:オラファー・エリアソン

オラファー・エリアソン 視覚と触覚』@アップリンク渋谷

www.ficka.jp

光を使った作品でも有名なアーティスト、オラファー・エリアソンの2008年の作品『The New York City Waterfalls』*5 の発表までを追ったドキュメンタリー。

彼の言葉にはよくわからない部分もあったけれど、おおかた「わかる!」と思えたのはうれしかった。丁寧なつくりで彼の言葉が鑑賞者に落ちやすいようになっているのだろう。

一つの大きなプロジェクトを完成にもっていく粘り強さと確信とには感服した。規模、求める完成度、人を巻き込み協力し合う力。私には想像もできない推進力。

鑑賞者に彼が直接話しかけるコーナーで行った光を扱った視覚実験は、意外と単純で愛らしいものだった。目新しい感覚にはならなかったけれど、映画としてこういう演出をすることは新鮮なのだろうか? 視覚実験の一つについては0:50あたりからのものが近い↓

www.youtube.com

けれど、これらの実験が「アートは世界を変える一手段であり、人は世界を変えることができるんだ」「“現実は主観次第”これはアートに限らず全てに言える。現実は見る者の見方で決まるんだ」*6 といった彼の言葉にすっと入れるように導いていた。

『Green light―アーティスティック・ワークショップ』と『Eye see you』@横浜トリエンナーレ2017「島と星座とガラパゴス

http://yokohamatriennale.jp/2017/index.html

Green light - An artistic workshop

Eye see you • Artwork • Studio Olafur Eliasson

横浜トリエンナーレについては、駆け足になってしまいオラファー・エリアソンの作品も丁寧には見られなかった。せっかくの機会だったのに、私って…。後々、今回展示されていた『Green light―アーティスティック・ワークショップ』だけでなく『Eye see you』もプロジェクト系の作品だと知って、改めて映画で見た、彼の世界との関わり方が思い出された。流通についても作品の一部として、社会への影響の与え方に徹底して取り組んでいるのだなと。”難民”と東日本大震災とを重ねる視点にもはっとした。

 

逃してしまった”光”の展覧会

展覧会に行きたいなと思い立ったときにちょうどやっていた展覧会に行きがちなもので、けっこう機会を逃しがち…。反省の意味もこめて、2017年に見ておきたかった!逃してくやしい!”光”関連の展覧会をピックアップしておきます。

ダン・フレイヴィン『DAN FLAVIN』@エスパス ルイ・ヴィトン東京

www.espacelouisvuittontokyo.com

アート+コム/ライゾマティクスリサーチ「光と動きの『ポエティクス/ストラクチャー』」@NTTインターコミュニケーション・センター

www.ntticc.or.jp

アンリアレイジ『A LIGHT UN LIGHT』@パルコミュージアム 

www.parco-art.com

会期が長いとうっかりする…。

特にANREALAGEの展覧会は機会が少なそうだし、NEWSファンとしても行っておきたかったっ。最終日だけ終了時間が早いことに気がつかなかった自分をうらむ。(そもそもの計画性がないのが悪いんだけど涙) 

 

2017年限定で私が気がついただけでも、こんなに光に関する展覧会があったもよう。アプローチも様々。言葉にしてみたら、自分の思考の浅はかさを実感して凹みましたが、こうしてまとめることが自分にとって少しは意味があると思いたい…。

光はそれ自体がとても魅力的な素材。そして世界を認識するための一つの根源的手段なので、”光”について考えると、自分自身の世界の認識にも直接的な刺激やゆらぎを感じます。それが楽しい。 

 

 

ライブの光について 

ライブの光と言っても演奏中ではなく、演奏前後で印象に残った光を2つ。

 

舞いあがる光:SPITZ『30th ANNIVERSARY TOUR "THIRTY30FIFTY50"』@横浜アリーナ

https://spitz-web.com/30th/3050tour/

ライブ映像のジャケットに使われている写真、これライブがいよいよはじまるって時のメンバー入場時のライティングなんです。演奏中じゃないのだよー。白くてまばゆいライトがたくさん上に向かって伸びているのが本当にきれいでまぶしくて。宝物がつめこまれたおもちゃ箱が開いたかのような幸福感と高揚感がありました。光だけでここまで気持ちが高ぶるものなのかと思わされたライティング。30周年ライブという期待感をがっちり受け止めて、想像以上の時間を約束する気合のようなものも感じました。『SUGINAMI MELODY』のオルゴールアレンジっぽい音楽も含め、たまらなく好き。この光を忘れたくなくて謎の絵をメモったくらい。だからジャケットに使われた理由も本当にワカル!!*7

www.youtube.com

 

夢ごこちの光:Cornelius『MELLOW WAVES TOUR 2017』@新木場 STUDIO COAST

CORNELIUSのライブは2回目*8、ワンマンに行くのは初でした!スタート前『あなたがいるなら』の前奏が流れる中、舞台上のカーテン*9 に太陽のフレアみたいな映像が音楽に合わせて伸びたり縮んだりする様も素敵でしたが*10、特にこれはイイ!!と思った演出が、終演後にミラーボールを回してくれたこと。演奏中に回すことはあっても、終演後に回してくれるライブというのを私は体験したことがなく、感激しました。終演後って味気ない光がついたり、暗い会場から明るい廊下に向かってひたすら歩くみたいなことが多い印象があって、急激に夢から覚めさせられるのだけど、むしろ夢心地を増幅するかのような光でした。進まない列にだるさを感じることもなく、出口付近にいたことを後悔するくらい、あの空間にまだいたかった。映像を撮りたかったけど、出口に向かう人の波の中で立ち止まることもできず断念。でもやっぱり同じ(?)気持ちの人はいたみたいで、先日の『NHK WORLD presents SONGS OF TOKYO』関連ツイートを見ていたら、新木場終演後の映像を撮影していた人を発見。「そう、これこれ!!」ってなりました。コーネリアスって視覚的演出にも力が入ってるんだなー、としみじみ感じた時でした。

 

 

2018年もその時々に気になる展覧会やライブに、気ままに足を運んで行きたいと思いますー。(行き当たりばったりの反省なし)

 

 

『光について』ってGRAPEVINEの曲がありますよね。この記事が関連しているわけではないのですが、2017年はGRAPEVINEのデビュー20周年だったとか!これもご縁ということで、私が好きな光に関連したGRAPEVINEの曲『白日』にて〆。前奏から入りがぞくぞくする。(しかし、MVになぜ犬猫の鳴き声を入れちゃったのだろう…。CD音源には入っていないから、ぜひそちらも聴いてほしい。)

新曲も相変わらずかっこいい。

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*1:展覧会場で配布されていたテキストより

*2:「インスタ栄え」する展覧会として話題だったみたい。

*3:SCAI THE BATHHOUSE | Exhibitions | 過去の企画展 | 大庭大介 個展

*4:チラシより http://www.pref.spec.ed.jp/momas/?action=common_download_main&upload_id=4730

*5:The New York City Wat... • Artwork • Studio Olafur Eliasson

*6:パンフレットより

*7:ちなみにアイキャッチ画像は、ツアーグッズ「ハチミツ スノーグローブ」のどアップ。

*8:1回目はフジロック

*9:カーテンがある状態もめずらしいのでは?

*10:先日放送した『NHK WORLD presents SONGS OF TOKYO』にも一瞬映っていました。